公立大学法人大阪府立大学

平成22年度大学教育・学生支援推進事業 大学教育推進プログラム

外部評価委員による評価の報告

この文書では, 当取り組みの外部評価委員による報告を達成目標毎に まとめたものである.
  1. 学士課程教育で培うべき数学的能力の明確化と数学力育成のためのカリキュラム策定
  2. 理工系以外も含めたすべての学生への数学教育の展開
  3. 授業時間外の学習支援の拡充
  4. 数学力育成についての質保証
  5. 全体のコメント

1. 学士課程教育で培うべき数学的能力の明確化と数学力育成のための カリキュラム策定

評価指標

  • カリキュラムマップが策定できたか
  • カリキュラムマップが「数学力」(※申請書参照)の各能力に対応しているか
  • 各学類のカリキュラムが各学類の特性に合わせた形で数学力育成に対応しているか。
  • 各科目でどのレベルまで数学力を高めるかのレベル設定ができているか。
  • 数学教育改革WGと外部評価委員の評価

H22年度目標

  • 学類のカリキュラムから数学力育成に関わる科目の抽出
  • 各学類で数学力育成に関わる科目での数学力育成の内容について検討

評価

評価者 5段階
評価
コメント
1C
  • 今回のプロジェクトでの基礎的部分として重要であるが,結果的には検討体制ができたという段階に留まる。
  • しかしこれは学内の大きな体制改革の進行状況に起因するもので,プロジェクト実施主体の責任ではない。
  • ただ私見に拠れば,プロジェクト実施主体側でキーワードとして用いられている「数学力」の内容をしっかり措定する作業がなお不十分であり,恐らくこのままでは科目の抽出まではできるが,その先が順調には行かないように感じられる。実際挙げられている力の「どれもが関係する」との意見が聞かれたとの報告があった。といって数学側だけで考えても抽象論になる危険がある。従来からある内容(sbuject)部分の抽出はしやすいので,それをどう用いるかという形で専門側に提出を求め,それらを集めて数学側でまた体系化するといった具体化のための往復作業が必要なのではなかろうか。
2C
  • カリキュラムマップについては、大ざっぱな見取り図を描いた段階のように見える。
  • 「シンボルを用いた論理的思考力」等の数学力の要素を具体化するためには、微積分や線形代数等の科目名だけではなく、それぞれの内容に踏み込んだ検討が必要である。現状ではそこまでには至っていない。
  • 現代システム科学域の3つの学類において、カリキュラムの設計段階から数学グループの教員が加わって議論をしている点は評価できる。
  • 上記3つの学類において、カリキュラムの整合性をはかろうとしている。まだ、レベル設定まで行っていないのではないかと推察される。
3B
  • 科目抽出、数学力の内容の検討は、おおむね達成できていると考えます。
  • 数学力育成の内容として、数学言語を使っての読解、記述、説明(コミュニケーションを支えるリテラシー),活用を意識した論理的思考の教育と評価ができると、学術的にも、実践の上での重要な成果になると考えます。
4B
  • 数学力育成に関わる必修科目(数学基礎Ⅰ、Ⅱ統計学基礎Ⅰ、Ⅱ)を 配置する作業の完了は確認できた。数学力育成に関わる科目の抽出が 評価時点(3/14)では継続中であるが、年度内の完了が見込まれる。 従って、この項目の目標は概ね達成されると判断される。

2. 理工系以外も含めたすべての学生への数学教育の展開

評価指標

  • 共通教育を含めて、全学域に数学力育成のための科目を配置できているか。
  • 専門教育の基礎として数学が必要な学域・学類は、その必要なレベルまで数学力育成に関する科目を配置できているか
  • それぞれの科目での、標準シラバス、統一教科書、ワークブック、Web教材が作成できたか
  • 数学教育改革WGと外部評価委員の評価

H22年度目標

  • 各学類の専門科目で数学力育成に関する科目を配置
  • 文系型入試で入学する学生に対する専門基礎科目の新設と授業内容の検討
  • 基礎科目での標準教科書、ワークブックの作成に向けての検討開始
  • 2年次科目でのWeb教材の開発

評価

評価者 5段階
評価
コメント
1A
  • カリキュラム改革で初年次教育で数学系科目を設置するとの目標が達成されている。特にそのカリキュラム設計段階から数学グループの教員が参加していること,文系に対して自覚的に科目を設置したことの意味は大きい。今後内容の検討を進め充実したものとなることを期待したい。
  • ウェブ教材の優秀さはすでに以前の教育GPで実証済みであるが,それが2年次の内容にも発展しつつあることはきわめて喜ばしい。これも一層の充実を期待したい。
2A
  • 平成23年度から「人文・社会科学のための数学」を開設するなど、数学力育成のための科目配置の検討がなされている。
  • 専門教育の基礎として数学が必要な学域・学類においても、適切な数学力育成のための科目配置が進められている。
  • 数学基礎科目について、標準シラバスや統一教科書等の標準化が進められている。
3B
  • 各学類の系統的な科目配置および文系学生に対する科目新設、授業内容の検討、教科書の作成などの検討は進んでおり、理工系以外も含めた数学教育の展開はおおむね達成できていると考えます。
  • 文系の場合には、数式を苦手とする学生たちに、数式の活用能力を高めていくような科目配置が重要と考えます。
4B
  • 数学力育成に関わる必修科目として数学基礎Ⅰ、Ⅱ統計学基礎Ⅰ、統計学基礎Ⅱを配置し、また文系型入試の入学者のための数学Aおよび数学Bの新設と授業設計がなされ、それをもとにパイロット授業が実施された。また教科書の改訂や演習書の作成、および2年次科目のWeb教材開発が評価時点(3/14)では継続中であるが、継続年度内の完了が見込まれる。以上のことからこの項目の目標は概ね達成されると判断される。

3. 授業時間外の学習支援の拡充

評価指標

  • 質問受付室の利用者数
  • 高学年対象の質問受付室が開設できたか
  • Math on Web の利用時間数
  • 授業時間外の学習支援に関するアンケート結果
  • 授業時間外の学習時間が増加したか(目標値 21年度調査時より50%増)
  • 数学教育改革WGと外部評価委員の評価

H22年度目標

  • 高学年の質問受付室の実施方法の検討
  • 2年次科目でのWeb教材の開発

評価

評価者 5段階
評価
コメント
1A
  • 検討の結果次年度からの体制が固まったという意味で,今年度の目標としては十分に達成されたと言える。次年度からはいよいよ本来の活動内容に入るわけで,進展を期待する。
  • ウェブ教材についてのコメントは上に同じ。
2A
  • 平成21年度まで質問受付室の利用者数は順調に増加し、23年度から文系学生への数学教育が強化されることから、さらに増加すると見込まれる。
  • 高学年対象の質問受付室については、カリキュラムマップの具体化を先行させるべきだろう。内容が明らかにされないと、質問の内容も想定できないはず。
  • Math on Webには2年次の科目の内容も追加されて、さらに強化されている。
  • ラーニングポートフォリオについても、カリキュラムマップとの関係が重要。
3B
  • 高学年の質問受付室の実施方法の検討は達成されており、2年次以降のWeb教材開発、ポートフォリオの作成は逐次進められ、おおむね達成できていると考えます。
  • 質問レベルのチェック・記録し、各学生の理解の深化を捉えられるようにするとよいと思います。
  • WEB学習履歴を収集し知識やスキルの獲得過程の分析ができると学術的にも、実践の上での学習支援のための重要な成果になると考えます。
4A
  • 文系学生利用による利用者増加に向けての検討や高学年向けの検討が実施されたこと、Web学習システムの拡張(サーバ追加と小テストシステムの設計)と2年次の2科目において教材開発と登録作業が完了したことが確認された。これらのことからこの項目の目標は十分達成されていると判断される。

4. 数学力育成についての質保証

評価指標

  • 基礎学力調査試験の実施により入学時の能力を継続的に測定
  • 同一科目での同一問題での定期試験の実施
  • 2年次、3年次での数学力に関する到達度評価試験が実施できたか、その結果から質保証ができたか、結果が改善に繋げられたか
  • Webで達成度評価試験を実施するシステムを構築できたか、そのシステム自体(ユーザビリティ等)を評価し、改善できたか、質保証システムの中で、このWebシステムが適切に位置づけられたか。
  • ラーニングポートフォリオによる数学力育成の形成的評価が実施できたか、その結果から質保証ができたか、結果が改善に繋げられたか
  • 数学教育改革WGと外部評価委員の評価

H22年度目標

  • 質保証システムの全体設計の検討
  • 23年度の基礎学力調査試験の問題作成
  • 達成度評価試験の実施・運営体制の検討
  • ラーニングポートフォリオの試作
  • Web小テストシステムの設計

評価

評価者 5段階
評価
コメント
1B
  • 質保証システムはこれ自身が新しい分野なので,試行錯誤で進めていくことでよい。諸外国の例も収集されるとよいであろう。いずれにせよ決定的なものはないと知るべきである。
  • 基礎学力試験はすでに何年か行われているが,冒頭の「数学力」の措定と並行して,試験問題をコンピテンシーの観点から系統的に整理する必要があろう。また経年変化が見られるような工夫が望ましい。
  • 達成度評価も新たな分野なので試行錯誤が必要である。また評価の目的が機関側のそれなのか,学習者のそれなのか分けて考える必要がある。後者のための「小テスト」と呼ばれている部分は「Web数学到達度自己評価システム」という名称ではどうだろうか?(webの語の座りがやや悪いが…)
2B
  • カリキュラムマップ→到達度評価→ラーニングポートフォリオ→数学力の具体化、というサイクルからなる質保証システムが展望できる。
  • 到達度評価試験はカリキュラムマップと連動させるようにしたい、という戦略は妥当である。
  • ラーニングポートフォリオ、Web小テストシステムは着実に強化されているが、オンライン型システムに過度に頼ることなく、対面式の支援と組み合わせた「ハブリッド型」の質保証システムを目指すべきだろう。
3B
  • 数学力の質保証システムの全体設計は検討が進められ、おおむね達成できていると考えます。また、基礎学力試験の問題作成はすでに達成できています。達成度評価試験、ポートフォリアの試作、web小テストのシステムの設計は進められており、おおむね達成されていると考えます。
  • ポートフォリオには、基礎学力試験、達成度評価,質問室の質問、E-learning,科目の成績,卒論も含めた縦断的データを集め、学生のモチベーションを高めるように工夫ができるとよいと思います。
4A
  • 学習ポートフォリオの在り方が検討検討され、具体的には理解度自己評価シート案の作成と学生の理解度を収集するマークシートアンケートの検討作業が確認されたこと、およびWebによる達成度評価試験を実施するシステムの構築の一環としてWeb小テストシステムの設計が行われたことが確認された。これらのことからこの項目の目標は十分達成されていると判断される。

  • 前回の特色GPに接続するものではあるが,単なる向上拡大ではなく,質的に全く新たな地平を切りひらくことが企図されている。したがって目標の実現を焦らず,着実に一歩一歩進めてほしい。今年度はこの意味で準備段階であり,それはほぼ達成されたと見てよいであろう。同時にどのような困難があるかも明瞭になってきたようであり,次年度はそれにどう立ち向かって,所期の目標達成に一歩を踏み出すかが問われることとなる。期待すると共に,できる限りのお力添えをしたい。
  • 大阪府立大学の学士課程全体を通じて数学的能力を高めようという画期的な取組みは、順調なスタートを切っているように思える。数学基礎科目を中心としたこれまでの実績 を高年次教育に広げて行く計画は現実的で実現性が高い。日本の高等教育に以前から必要とされていた人文・社会科学のための数学への取組が、順調に進められている点は評価できる。その一方で、専門教育の基礎として数学が必要な学域・学類の高年次教育へのかかわり方は、具体的な形として表されていない。文系の数学ほど緊急を要するものではないが、中長期的には重要な取組である。一般論として、各学域・学類の教員と数学グループが相互に信頼できる関係を作ることがまず大事だろう。教育の内容に踏み込んだ率直な議論を行い、その結果として具体的な科目のイメージが構築されることが望ましい。全学域の数学力にかかわるカリキュラムマップを作ることが、当面の最大の課題のように思われる。
  • 特色GPの成果を踏まえて,初年度の計画がおおむね達成されていると評価します。
    具体的な取り組みの多くがスタートする来年度以降の成果が大いに期待できると思います。センターの数学担当の教員の献身的な取り組みには目をみはるものがあり,それを支える形での,全学的な支援が今後も一層重要になると考えます。
  • 2年次以降の本格的な事業展開に向けた基礎作りが、取り組み採択後の限られた時間で確実になされていることが確認できました。
     本取り組みは大学入学者のユニバーサル・アクセス段階に突入した現状を踏まえ、文系理系に関わらず全ての入学者に対して、数学力という切り口による入学者受け入れとそれに続く学士課程の教育体制およびそのPDCAサイクルを構築されたところに意義を感じます。
     今後の課題としては、高校教育までの算数・数学教育および生涯に渡る学びとの接続と関係して、卒業後も自律的に学習できる力の育成(平成20年度卒業予定者アンケート結果)、つまり数学に対する興味、関心、意欲などの動機付け教育をどのように具現化されるかがあげられます。

(2011年4月28日)

Copyright© OSAKA PREFECTURE UNIVERCITY All Rights Reserved.