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「学生の学習をサポートする『質問受付室』の取り組み」
総合教育研究機構・数学グループ (2005.11.30掲載)

質問受付室 総合教育研究機構・数学グループでは,学生の学習支援策の一つとして,専門基礎・数学科目に関する「質問受付室」の運営を4月から行っています。今回の特集では,この質問受付室の取り組み内容や学生の利用状況などについて,17年度数学科目主任の石井伸郎教授にお聞きしました。ーまず,「質問受付室」とは,どういうものでしょうか?専門基礎・数学科目の授業内容に関する質問への応対を行うための専用スペースです。質問受付室には,専門基礎数学科目の担当教員が交代で詰め,担当授業・クラスに関わらず,専門基礎数学科目についてすべての学生からの質問に応対します。今年度は,A2棟(旧・総合科学部2号館)1階の2127Nという部屋に質問受付室を設置し,学期中は休日と全学休講日をのぞく毎日,昼休みと夕方に開室しています。2005年度後期は昼は12:00~13:00,夕方は15:00~18:00に開けています。ー「質問受付室」を作ることになったきっかけはなんでしょうか? 総合教育研究機構の立ち上げ準備の段階で,数学グループでは,教育サービスの質の向上という観点からどんなことができるか考えました。数学の場合,学生の自主的な勉強・演習なしには実力は身に付きませんので,いかに授業時間外での学習サポートを充実させるかということが大事になってきます。授業時間外の学習サポートとしてすぐに思いつくのはオフィスアワーの充実でしょうが,担当教員が個別に質問受付可能時間を指定して研究室で待機する従来型のオフィスアワーは,ほとんど利用されず効果を上げていませんでした。その理由としては,

などが考えられます。そこで,

ことで,時間・場所に関する不便さの解消をめざすことになりました。

 教員が個別に研究室で担当授業のオフィスアワーを設定する場合,一人の教員が学生の質問に応対できる時間は限られるため,学生はその限られた時間帯に担当教員の研究室まで行かなくてはなりません。しかし,共通の質問受付室で質問受付を行う場合,毎日4時間ずつ開室したとすると,月から金までで合計20時間応対可能ということになり,学生は自分の都合に合わせて利用できます。教員が個別対応した場合に比べ,学生の利便性は確実に上がるといえるでしょう。ーこれまでの利用状況はどうでしょうか? 前期の授業期間中は,月平均でのべ50人前後の利用者がありました。同様の試みを始めた他大学の中には,せっかくのサービスがほとんど利用されず苦労しているところもあると聞きますので,開始初年度の前期でこれだけの利用者があるのは順調な滑り出しと言えると思っています。

 利用の内訳ですが,前期は昼12:00〜13:30と夕方16:00〜17:30の開室で,利用者数は昼:夕方=3:2という割合でした。学年別ではやはり1回生が多く,利用者全体の3/4を占めました。利用者一回あたりの利用時間については,10分以内というのが一番多いですが,一方で,30分以上というのも全体の1/3近くあります。30分以上の利用の場合,一回の利用で40分あるいは50分というものもあります。時間が長いケースは,質問の数が多いため時間が延びる場合と,数は少ないけれど難しいところをじっくり時間をかけて説明を聞きたいということで時間が延びる場合があります。ー運営上の課題と今後の展望などについてお聞かせください。 先ほど,利用者数に関して順調な滑り出しと述べましたが,授業外の学習サポートが必要な学生はもっと多いはずと考えています。そういった学生がもっと多く質問受付室を訪れるようにするにはどうしたらよいかを考えていく必要があります。

 運営体制を見直す参考にするために,前期の終わりに質問受付室の利用に関するアンケートを行い,質問受付室の認知度・利用者の感想・利用のしやすさ(開室時間・場所)などについて調査しました。その結果,「17:30以降,もっと遅い時間にも開けてほしい」という要望が強いことが分かりましたので,後期はVコマ目終了後でも来られるよう18:00まで開けることになりました。

 積極的に利用する学生がいる一方で,「質問受付室の存在を知らなかった」という学生もかなり存在し,認知度が低いという問題も浮き彫りになりました。各授業で担当教員が利用を促しているはずなのですが,やはり口頭でいうだけでは伝わらない,あるいは記憶に残らないという問題があるようです。そこで,後期には,PR用のちらしを作成して授業で配布して周知を徹底することにしました(実際には,機構教員の担当する工学部全クラスと理学部の一部のクラスで配布しました)。後期開始後の利用状況ですが,後期開始後1ヶ月間の利用者数はのべ33人でした。前期の月平均と比べると少し減っていますが,前期も後半にかけて利用者が増えていきましたので,後期も中間テストなどが実施される時期になると徐々に増えていくと思われます。今後もより多くの学生に利用してもらえるよう,まずは気軽に来てもらえる雰囲気を作るところから,努力していきたいと考えています。

 今後についてですが,質問受付室に全数学授業の配布プリントを集約して休んでしまった回のプリントを質問受付室で受け取れるようにする,問題集・参考書の見本をそろえてレベルにあった教材を紹介できるようにするなど,数学の勉強に関してはまず「質問受付室」にいけばよいと思ってもらえるよう,サービスを充実させていきたいと考えています。ー最後に,数学の勉強について学生へのメッセージがあればお願いします。 「教科書の問題や演習用に配布したプリントの答えをください」といってくる学生が後を絶ちません。「まずは自分で解いてみて,わからないところがあったり,やった答え・解法が合っているか見てほしいということならいつでもみてあげるから質問受付室においで」というのですが,納得してもらえないようです。「答えがないと勉強をはじめられない」という人さえいます。

 高校までの数学の勉強は,答のある問題をいかに早く正確に解くか,という勉強だったかもしれません。しかし,大学を卒業した後は,答えどころか,問をたてるところから自分でやらなくてはならない世界へと出て行く訳ですから,いつまでも誰かから正解をもらえることを頼りに勉強していてはいけません。教わったことをただ鵜呑みにするだけでなく,自分で考え自分で納得し,ということを繰り返すことで力がついていくし,そうすることで自分の実力に自信が持てるようにもなっていきます。まずは自力でできるところまで答えなしで頑張ってみる,そういう姿勢で臨んでほしいと思います。もちろん,分からなくなったらいつでも質問受付室に来てください。こう言うと,「質問するほど勉強していないので」とか「こんなこともわかっていないのかと思われそう」などの理由で質問受付室に足が向かなくなる人がいるようですが,授業内容の理解に不安を感じたらいつでも遠慮なくきてほしいです。質問受付室は「わからない」という人をサポートするためにあるのですから。どこがわからないか,どこからわからなくなったか,ということを突き詰めることからはじめて,みなさんがわかるまでおつきあいします。